まっとうな生活 ―― 『花のズボラ飯』(久住昌之、水沢悦子)

主人公・花の作る「ズボラ飯」(手抜き料理) は、 確かに立派な「お料理」ではないけれども、ぼくの基準でいくと かなりレベルの高い自炊だ。

たとえば第6話、花は空腹でおなかが鳴ってからキムチチャーハンを作りはじめる。残りご飯か冷凍ご飯のストックがあったとしても、できあがるまでに 3、40分は かかっているのではないだろうか。(材料は、ご飯とキムチの他は、たまごとネギと刻み海苔と調味料)

ぼくだったら、ご飯が炊けるのを待つ気にならないし、残りご飯があったとしても、キムチだけで食べてしまう。(ごはん炊いてキムチをのせるのは、ぼくの「自炊」の定番メニューだ。)

空腹であるにも関わらず手間と時間をかけてキムチチャーハンを作るといった情熱/執着はどこからくるのだろう。

あるいは、第5話、花はレトルトのクリームシチューに、刻んだパセリを加える。こういった一手間をかけることに、どんな意味があるのだろう。

おいしい物が食べたいというだけではなかろう。健康を考えて?メニューを見るとそうも思えない。

不思議だし、感心もしてしまう。


第13話、夕食のメニューはご飯と塩鮭と「ふえるわかめ」のみそ汁。

みそ汁をよそいながら、

なんかアタシ今 すっごい充実してるんですけど


いただきますをして、焼き鮭でご飯を一口食べて、みそ汁をすすって、

はーっ アタシ今 すっごくマットウ! 真っ当な人間だわ


継続できる程度に適度に手抜きをしながら、花のように、食べること――に限らず、生活全般に対する関心を、ぼくは もうちょっと しっかり持ちたいと思う。(何度目だかわからないけど、そう決意する時期が またやって来ている…


ところでこのマンガ、台詞のほとんどは花の独り言で、女性の一人暮らしをのぞき見ているような感じがあって、そこもおもしろい。(連載は女性向けの雑誌『Eleganceイブ』)

花のズボラ飯

花のズボラ飯