姉ヶ崎海溝(ラブプラス麻雀)

リンコちゃんがポン、チー、ロンと小気味よいリズムを刻み、マナカちゃんがしっかりとメンタンピン(そして時に三色)でネネさんと僕の点棒を削る展開が続いて、南4局、オーラス。親はネネさん。
洗牌しながら僕はまだ迷っていた。リンコちゃんの有効牌を絞って足止めしつつ、マナカちゃんを牽制してネネさんの連荘をサポートしなくてはいけない。どうしたらいい…。
「あしたは、晴れかしらね…。」
(!?)
「せっかくの晴れ着だもん、雨とかだったら最悪だよー。」
「天気予報では、晴れるって。でも、とっても寒くなるんですって。」
ネネさんは洗牌する指先に目を落としたまま他愛ない会話に興じていて、その意思を確認することができない。そうこうするうちに、二人が洗牌を終えて山を作り始める。もう迷っている時間はない。
「は、晴れると、いいね。」
一足先に山を作り終えたネネさんが、卓を撫でるようにして、賽子を軽く振った…。(振ったのか?)
「すごーい! 2だあ!! ついてるねえ!」
「なにかいいことあるかしら。ふふ。」
マナカちゃんが黙っているのが気になる。が、とりあえずリンコちゃんの意識を賽子から逸らさなければならない。
「そ、そういえば、明日の初詣だけど、何時にする?」
「早い方がいいと思うんだけど、いろいろ用意もあるし、お昼をすませてからでいいんじゃないかしら?」
「リンコちゃんとマナカちゃんの晴れ着姿、たのしみだなー。ふふ。」
「えへへ。期待しててよー。」
「わたしもネネさんの晴れ着姿、すごくたのしみです。」
ネネさんが二人を晴れ着の話題に引き込んだ。今ならいける。と思って賽子に手を伸ばそうとした瞬間、
「はい。サイコロ。」
「あ、ありがとう…。」
「どういたしまして。」
万事休す。マナカちゃんから手渡しされてしまった。こうなっては振らざるを得ない。置き賽なしでピンゾロは不可能だ。ネネさんは一体どんな表情をしているのか。僕は顔を上げることができない。ええい、ままよ!

………

すっかり混乱した僕は、その後、リンコちゃんに二副露させた上に白板ノミ手に放銃してネネさんの親をあっさりと流してしまい、大晦日の麻雀大会は終わった。帰宅してベッドに横になった今も、終局時のネネさんの声が僕の頭の中をぐるぐると回っている。
「次に期待、かな…。ふふふ。」
深い海の底に吸い込まれていくような気がする。

メモ

ラブプラス姉ヶ崎寧々のSSです。こんなことを考えて書いていました。→姉ヶ崎寧々の魅力 - みるいし