戦死するぼくが見る戦争――渡辺玄英「火曜日になったら戦争に行く」
いつかぼくが「戦争」に行って、殺したり殺されそうになったりして、命が途切れる最後の数分間、もう時間の使い方も何も計算できなくなった混乱した頭で自分が参加した「戦争」について考えたとき、こんな錯綜した風景が見えるのだと思います。
いつどうして始まって、いつ終わるのか、なぜぼくが参加しなければならなかったのか。――そういったことを了解できぬまま、ぼくはその「戦争」で死ぬのでしょう。
だから、ぼくが最期に見る光景はひどく非現実なものだろうと思います。
いまは虹がでています
きみにそれを教えてあげたい
ケータイでメールを送ります
「西の空をごらんなさい きれいな虹がかかっています
虹の上を たくさんのわたなべが渡っていくかのようです」
これをきみの記憶装置(メモリー)に保存してください
西の空にきれいな虹がかかって
そして野ウサギを殺したと*1
いや、「いつかぼくが戦争に行って」というのではなくて。
ぼくはいま「戦争」してるのかもしれない。
たぶんそうだと思います。
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*1:渡辺玄英「火曜日になったら戦争に行く」