書くことをやめたとき――アゴタ=クリストフ「昨日」

ビアスとリーヌ。このふたつの名を手放して子どもらに与えたとき、「私」は書くことをやめている。

「わたしたちはひとつの物語を生きているわけ?」
「そうさ、リーヌ、ぼくらはひとつの物語を生きているんだ」
「恋愛物語なの?」
「それはきみ次第さ、リーヌ」
アゴタ=クリストフ「昨日」